ADSL導入顛末記(後日談)
「ADSL導入顛末記」のその後の報告だ。「残件」の追求と、「最近のADSLサービスの状況分析」を行ってみた。
ADSLの導入騒動を綴った「ADSL導入顛末記」にあって、最後まで残ってしまった問題が一つあった。それは、「Web閲覧中などに一時的に通信が止まる事がある」という件だ。この件については、「顛末記」の第五部でも書いた通り、NTTのFLET'Sの公式サイトに、
「この現象の報告がたまにありますが、まだ原因特定に至っておりません。 しかしこれはWindowsのDHCPの設定に起因する可能性があります。DHCPの プロセスが定期的にリクエストを出し、その間通信が途絶えるというものです。この現象が発生する場合にはNICにプライベートアドレス (例:IPアドレス=192.168.0.5 サブネットマスク=255.255.255.0など)を設定してみてください。改善する場合があります。」
との記述があった。
ここで書かれている「DHCP」とは、「Dynamic Host Configuration Protocol」の略だ。あなたの使っているPCのOSがWindows9x系なら、「ネットワークのプロパティ」から、「TCP/IPのプロパティ」を開いてみて欲しい。すると、「IPアドレスを自動的に取得」という項目が表示されるはずだ。ここがチェックされていれば、あなたの使っているPCは、インターネットに接続する際、その都度プロバイダ側から割り当てられたIPアドレスを自分のIPアドレスとする。(実際には、IPアドレス以外にも幾つかの設定を行う)
その都度(ダイナミック)にPC(ホスト)の設定(コンフィギュレーション)を行う通信規約(プロトコル)がDHCPという訳だ。
ではルータに接続しているPCの場合はどうだろうか? 昨今の市販ルータは、ほぼ全てDHCP機能を持っている(というか、DHCP機能を持っていないルータを私は知らない)。ルータに接続されたPCが起動されると、ルータは、そのPCに自分が制御するネットワークの中だけで通用するIPアドレス(プライベートIP)を割り当てる。そして、インターネットに接続する際は、ルータがプロバイダ側のDHCP機能を使って自分のIPアドレスを割り当ててもらう。その後、自分がIPを割り当てたPCとインターネット側との通信を仲介するのもルータの役目である。
FLET'Sの公式サイトにあった「DHCPのプロセスが定期的にリクエストを出し・・・」という記述は、接続の際以外にも、PCがDHCPの機能を呼び出して悪さをしてしまうという事のようだ。解決策の「プライベートアドレスを設定する」ということは、DHCPを使わないと言う事だし、要するに、Windowsのバグと言うことか? まあ、別に珍しくもないけど。
●最終問題解決す・・・?
「顛末記」の第五部を読んでもらうとを分かるが、私のこの辺りの記述はかなり歯切れが悪い。これは、「解決策」の意味するところが今ひとつ理解できなかった為だ。上のDHCPの説明を理解してもらった方の中にも既に疑問をもたれた方が居るかも知れないが、「解決策」にある「プライベートIP」が設定可能なのは、ルータ接続している場合だけなのだ。では、この現象はルータ接続しているときだけに発生するのか? あるいはLANカード直結でこの現象が発生した場合は解決できないと言うことなのだろうか? それに、「NICにプライベートアドレスを設定する」という記述もわかりにくい。NICというのはLANカードの事で、つまりはハードウェアの事だし・・・。
或る程度心得のある人を想定したFAQなのだろうが、初心者がこの辺りのネットワーク設定を下手に変更してしまうとインターネットに接続できなくなってしまう。もっと慎重な情報公開をお願いしたいものだ。
第五部記述の時点では、これらの疑問が有ったため曖昧な記述となってしまった。しかしまあ、何事もやってやってみなけりゃ分からない・・・かもしれない。というわけで、PCのTCP/IPのプロパティからDHCPを外し、プライベートIPを固定にしてルータ接続してみることにした。しかし、上でも書いたが、DHCPで設定する項目はIPアドレスだけではない。DHCPを外すにあたっては、を個別に設定する必要がある。それぞれの項目の詳細の解説は省略するが、要するに初心者向けではないのだ。この辺りに興味のある方は、ネットワークの入門書を読んでみていただきたい。(まあ、要望が有ればもう少し詳しく解説しますけどね)
- IPアドレス
- サブネットマスク
- ディフォルトゲートウェイサーバアドレス(ディフォルトルート)
- DNSサーバアドレス
設定の結果は・・・どうやら効果があったらしい。急にWebが閲覧できなくなるという現象は、ほぼ無くなった。「ほぼ」というのは、単にプロバイダやサーバ側が込んでいて接続できない場合もあると思われるためだ。100%の自信はないが、少なくとも使い勝手的には明らかな改善が見られた。という訳で、これをもってADSLに関する懸案事項は全て解決した・・・事にした。
むぅ。実は、もう一つ有るには有る。Web閲覧中の、「****に接続しようとしましたが拒否されました」というエラーだ。最近になって、これはプロキシサーバとの通信がうまくいかなかった場合にNetscape6.1が発するエラーであることが分かった。しかし、プロキシサーバはプロバイダ側にある(多分)。発生頻度が非常に低いこともあり、現状はちょっとお手上げである。(ああっ!歯切れが悪い!)
昨今のADSL業界は、加入者が激増していることもあり非常な活況だ。それぞれの業者が互いに激しく凌ぎを削っており、接続料がどんどん下がり、サービス内容もどんどん変わっている。また、ブロードバンド業界全体で言えば、走るADSLに対して光ファイバー接続が猛追を開始しているし、CATV接続も巻き返しを図ってサービスの高速化、充実化を行っている。無線接続も黙ってはいない。
そんな訳で、「ADSL導入顛末記」を書いた7月下旬からたった2ヶ月しか経っていないのに、少なくとも第一部の情報は最早古くなってしまった。そこで、現在のADSL業界の状況を踏まえ、接続業者比較を改めて行ってみることにした。
まずは、接続料金の値下げ合戦だ。この争いは、新規加入者が殆どである事と、一度サービスを決めてしまうと別のサービスへの移行が困難である事から、非常に激しくなっている。この辺りは、端末0円当たり前だった携帯電話/PHSの加入者奪取争いを思い出させる。7月からの比較で言うと、ここではアッカとイーアクセスが勝負を掛けており、先行しているYahoo! BBは動かず、フレッツADSLはかなり遅れをとっている。また、日本テレコムのJ-DSLもそれなりにがんばっている感じだ。(他にもADSLサービスがあるが、料金的について行けてなかったり、規模が小さかったりするのでここでは省略する)
この5つの業者の、サービス料金(10月から)の比較を行うと下のようになる。なお、Yahoo! BB、J-DSL以外はasahi-netで1.5Mbpsのルータ契約を行った場合の料金を計算している。また、キャンペーン価格は考慮していない。
※J-DSLについては、本日(9月27日)発表された、10月よりのADSL月額料金。
初期費用(NTT込み) ADSL月額 レンタル月額 NTT回線料 プロバイダ料金
(asahi-net)月額料金合計 Yahoo! BB 3600円+ルータ代 990円 550円 187円 1290円 3017円 フレッツADSL 3600円+ルータ代 3100+430円 550円 − 450円 4530円 イーアクセス 26400円 2430円 無し(買い取り) 187円 450円 3067円 アッカ 24400円 2350円 無し(買い取り) 187円 450円 3167円 J-DSL 6600円+ルータ代 2880円 500円 187円 − 3567円
月額合計を見てお分かりのように、単純に「ADSLを行うための月額料金」としては、アッカとイーアクセスはYahoo! BBに完全に追いついている。この2つの業者の場合、初期費用が大きいが、これはADSLモデム+ルータの買い取り込みである事を忘れてはいけない。最近は、高性能のルータが1万円切ったりしているから何とも言えない面はあるが・・・。これとほぼ並ぶ形でJ-DSLもがんばっている。これらに対して、フレッツADSLの割高感が強まって来ているのが分かる。
次のポイントは、8Mbpsサービスだ。Yahoo! BBは最初から8Mbpsを打ち出している。これは、AnnexAというアメリカや韓国で普及している規格で、ISDNと干渉してしまい、十分なパフォーマンスが出ないと言われているが、ニュースサイトなどでのYahoo! BBの体験記事などを読んでみると、4Mbps以上のスループットが当たり前のように出ているようだ。もちろん、環境によってはパフォーマンスが出ないことも有るのだろうが、今のところ、思ったより速度が出ているのではないかという印象を持っている。
これに対して、アッカとイーアクセスが対応を発表しているのが、G.dmt AnnexCという規格だ。これは、各社が行っている1.5Mbpsの規格であるG.lite AnnexCに対して、同じくISDNからの干渉を避けながら高速化を図った規格のようだ。この規格とそのスループットの実測結果については、アッカのホームページに詳しいデータが掲載されている。それによると、普通の条件下では矢張り実際のデータ転送で4〜6Mbps程度出るものらしい。ここには、Windows9xにおけるMTUとRWINの効果についても記述がある。
8Mbpsのプランに関して、同じく比較データを作ってみた。実は、これが作れるようになったから後日談を書く気になったのだった。PCスピードヲタクの性である。即ち、9月21日に、asahi-netからアッカとイーアクセスの8Mbpsプランが発表されたのだ。
初期費用(NTT込み) ADSL月額 レンタル月額 NTT回線料 プロバイダ料金
(asahi-net)月額料金合計 Yahoo! BB 3600円+ルータ代 990円 550円 187円 1290円 3017円 イーアクセス 6400円 2730円 500円(ルータ?) 187円 450円 3867円 アッカ 6400円 2830円 500円(ルータ?) 187円 450円 3967円 so-net(アッカ) 6600円 3280円 500円(ルータ込み) 187円 − 3967円
参考に、アッカの8Mbpsサービスを最初にサポートしたso-netの料金も比較してみている。so-netのサービスではルータタイプモデムをレンタルすることになっている。asahi-netのサービス紹介ページにははっきりとした記述がないが、多分同じだろうと思う。(9月30日注:よく見たら、ルータタイプと書いてあった。失礼)
ただ、何れにせよ複数のPCで使用する場合、ハブが必要になるのではないかと思う。
それにしても、普通に考えてみて、この速度差でこの値段差なら、これからADSLを導入するのであれば8Mbpsサービスは十分考慮に値すると思う。しかも、結果的に初期費用が安い。キャンペーン価格をうまく使えば、更に初期費用や月額が安くなる可能性もある。残念ながら、フレッツADSLの割高感が更に際立ってしまった。この値下げ競争は必ずしも健全だとは言えない気はするが、やっぱりNTTはフットワークが重いようである。
そんなわけで、まさかこんなに早いとは思わなかったが、騒いできてしまった。PCスピードヲタクの血が・・・。
8Mbpsへの乗り換え・・・・・・正直言って、今現在のインターネットサービスに於いては、1Mbpsの速度が出ていれば全く不自由することは無い。むしろ贅沢なくらいだと言うことも分かっている。しかし・・・血が騒ぎ始めてしまったのだからしょうがない。
もちろん、新しい8Mbpsサービスの方が、現在のフレッツADSLより確実に月額負担が軽くなるということもある。現実には、フレッツADSLのアクセスラインはドルフィンインターネットのプランフレッツを使用しているため、プロバイダの料金は2000円掛かっている。従って、実際に私の払っている月額料金は、3800+550+2000=6350円だ。10月からのフレッツADSL値下げ分を計算に入れても5650円になる。これとアッカのプラン(ちなみに、今現在、青梅がサービスエリアに入っているのはフレッツADSLの他はアッカだけ)を比べても、月額2000円近い差がある。年間で2万以上だ。
だが、それには幾つかの問題があることも事実である。
その一つは、ルータの問題だ。いや、だったと言うべきか? 要するに、新たにルータをレンタルする場合、苦労して(?)手に入れたBRL-04Aが遊ぶことになってしまう。そうなれば、誰かに売っ払うか?などと思っていたら、ユーザ思いのプラネックスさんから素敵な発表が・・・。BRL-04Aをなーんと、限定2万台について8980円で売るというのだ。ざけんな!俺は定価の16800円で買ったんだぞ!差額の7820円を返せぇ!!
また、価格差のメリットを最大限に活かすためには、ドルフィンを解約する必要が出てくる、ということもある。今現在のドルフィンのメリットは正直言ってメールアドレスだけだが、それを捨てるかどうか、である。なお、ついでに言うならフレッツADSLがG.dmt AnnexCに対応する可能性もあるにはある。これも、ドルフィンの出方と絡んでくる話しだが。
だが、実はそんなことよりもっと大きな問題がある。ADSLの乗り換えには、非常な困難が伴うのだ。それは、
からだ。一旦ADSLを解約して、ただのアナログ回線に戻し、新たにADSL開通の回線チェックを受け、問題なければ開通するが、どうやらそれに2週間以上掛かる可能性があるらしい。その間は、元の(?)モデム暮らしである。更に、最悪のシナリオを書くと、新たなADSLサービスの回線チェックが不首尾に終わり、仕方ないので元のサービスに戻そうとしたら、そのサービス用のADSL収容回線数がフルになって、新たな設備導入まで復活がお預けになってしまうなんて・・・。ああっ!とてつもなく怖い考えになってしまった。
- 別のADSLサービスに移行する場合、それまでのADSLを一旦解約して再審査してもらわなければならない
アッカからは、青梅で8Mbpsのサービスが開始されるスケジュール(10月中旬)も既に発表になっている。っていうか、今調べたら、もう予約受付中になっていた。「顛末記」の第一部でも書いているが、何故だか青梅はアッカの進出が早い。例えば、三鷹、立川、八王子などより先だ。もしかして、アッカの重役でも住んでるのだろうか?
いずれにせよ、おそらく日本初(?)かもしれない、「ADSL乗り換え顛末記」を書く事になるかどうかは、この1,2週間の情勢如何に掛かっている。乞うご期待!?