ADSL導入顛末記  第二部(ブロードバンドルータの選定と導入準備)

●ブロードバンドルータを求めて

 まず、誤解の無いように書いておくが、ADSLは、PC1台であればADSLモデムのLAN(イーサネット=Ethernet)端子とPCのLANカードを直接接続する事で通信を行うことが出来る。フレッツADSLの場合は、申し込むと漏れなく送られてくる接続ソフトを使って、PPPoE(Point to Point Protocol over Ethernet=要するに、LAN経由でプロバイダに接続する仕組み)を行うのだ。これを私は勝手に「LANカード直結」と呼んでいる。しかし、一本の回線を使って複数のPCでインターネット接続する場合には、ルータが必要だ。ルータの役割の大きな一つは、ルータに接続されたPCに対して、内部(ルータと、それに接続されたPC)のみで通用するIPアドレス(ローカルIP)を付与し、それぞれのPCからの通信要求を纏めて、外部(インターネット全体)に対して、あたかもグローバルIPを持った一つのPCで有るかのように振る舞う機能だ。これをIPマスカレード(仮面舞踏会?)などという。

 我が家では、ISDNをダイアルアップルータ(ダイアルアップ接続する場合のルータ。接続の際に電話を掛けてネゴシエーションまでやってくれる)を使って2台+αのPCでシェアしていた。従って、ADSLを導入してもルータを設置する必要がある。ルータがあれば、通信の必要がある度にルータがPPPoEを行ってくれるので、会社のLANの様に、特に接続/切断を気にすることなくインターネットを使える。ちなみに、他のADSL業者では、PC1台の場合でもLANの設定をするのみで「接続」という概念はないらしい。キイハナ。
 また、これはそれほど知られていないが、インターネットにルータで接続すると、セキュリティ上は「LANカード直結」の場合よりも遙かに強くなる。これは1台で接続する場合でも、プロバイダが接続の際に付与してくれるグローバルIPアドレスと、PCにルータが付与するローカルIPが異なるためだ。つまり、悪意を持って外部からPCに不正アクセスしようとしても、インターネット上の場所(IPアドレス)が特定しにくいので不正アクセスが困難になるのだ。

 ブロードバンドルータに関しては、実はなんとなく目星をつけていた。Yahoo! BBの発表より前、6月21日にNTT−MEから新しいブロードバンドルータ「BA512R」という機種の発表があって、結構いいなー、などと漠然と思っていたからだ。NTT−MEは、ISDNで使っているダイアルアップルータ(MN128-SOHO SL10)のメーカでもあるので、なんとなく安心感があった。また、今まで発売されていた「BA512」の後継機種であることも気に入った。記号が付く類の後継機種(要はマイナーバージョンアップ)は、旧機種で積み重なった問題を一気にクリアする形で出てくる可能性が大きいからだ。(はい、ドキッとした技術者、手を挙げて!) ちなみに、メーカとしてのウリは高スループットとファイヤーウォール機能の強化らしい。
 発表では、発売は「7月3日から順次出荷」とのことだったので、7月9日申し込み、7月16日開通にもタイミングが合う。もちろん、事前に購入することも考えられたが、購入した後「お宅はADSLは使えません」などと宣告されたら元も子もないので、導入が決定した段階で購入活動に入った。まずは、かれこれ7、8年も通い、信頼をおいている秋葉の某ショップにメールで入荷の有無問い合わせてみた。7月14〜15日の週末に購入できないと、最初から複数PCでは使えなくなってしまう。最悪は入手するまで1台のPCのみの「LANカード直結」で使うこともできるが、そんな期間は出来るだけ短くしたい。ショップの回答はすぐ来た、「7月14日発売となる」との回答。値段は未定。
 だがしかし、ショップからの回答が来るまでに、私は情報を集め、既に別の選択肢を模索しつつあったのだ。


●急転直下のルータ選び

 情報収集は、もちろんインターネットを使って行った。検索サイトを駆使して行き当たった某掲示板の主は、「BA512R」の旧機種である「BA512」のユーザだった。しかし、流石旧機種というべきか、いいことがあまり書いていない。実は、最初の頃、BA512はPPPoEに対応してなかった(FWのバージョンアップで対応)り、接続が勝手に切れてしまう系のバグも有ったらしい。また、この機種の元売りはプラネックスという会社で、NTT−MEはそこからOEM供給を受けているだけだと言うことも分かった。「なーんだ」って感じである。
 その掲示板では、幾つかのブロードバンドルータの話題が出ていたが、そこで「無難な選択」として上げられていたのが、メルコのBLR−TX4という機種だった。暫く前から有る機種らしく、メルコのHPにはネットワークゲームへの対応状況、設定方法まで記載されている。いかにも「実績」が有りそうだ。この製品の「特長」のページを読んでいたときのことである。「ふーん、LAN側は10/100BASE-TXのスイッチングHubが4ポートかぁ・・・どはっっ!!」急に寒気を感じ、私はNTT−MEの発表ページを即座に開いた・・・無い。そう、BA512RにはスイッチングHub機能(LANの分配器と思えばよい)は付いていなかったのである。LANの出口が一つあるだけ。そこに別途スイッチングHubを接続してやらなければならない。つまりルータの他に、100BASE-TX対応のスイッチングHubを購入する必要があるのだ。これは、一番安くても5000円弱する。ルータの本体が15000円程度だから、2万円近い出費となる。それまでは、勝手にBA512RにはHub機能が付いてるとばかり思いこんでいたのだ。BLR−TX4の実売も15000円程度なので、比較した場合スイッチングHubの分がまるまる追加出費の計算となる。むむむ・・・。

 ほぼ、BLR−TX4にしようと心を決め掛けていた7月10日に、プラネックスから新しいブロードバンドルータの発表があった。高スループット化をウリにしている「BRL-04A」という機種。ちゃんと4ポートのスイッチングHubが付いていて、定価は16800円だという。「高スループット化」というのは、旧機種である「BRL-04」に対してである。この辺はBA512Rの場合と同様だ。だが、但し、ああ如何せん!発売が7月下旬との発表なのである。ぬぉぉぉぉ!タイミングが合わん!と思いつつ、まだ諦めきれない私は、件の秋葉ショップへ再び問い合わせメールを送るとともに、プラネックス自身にも問い合わせメールを送った。というのも、プラネックスの直販サイトでは、11日時点で既に購入申し込みが可能になっていたからだ。16日からADSL開通という事情も合わせて連絡したところ、プラネックスからすぐに返事が来た。それによると、「直販の場合、初回出荷は16日からとなる予定です」とのこと。それなら1日程度待てばルータが間に合うかもしれない! その後、私は直販サイトの問い合わせ電話番号に直接電話を掛けて問い合わせてみた。すると、「これは、実はアメリカからの輸入品なんです。14日に日本到着の予定で、そこから動作確認を行い、翌週から出荷する予定です。お申し込みの場合お早くお願いします」とのこと。輸入品だと聞いて、これまた「なーんだ」という気分もあったが、とにかく間に合いそうである。

 BA512R、BLR-TX4、BRL-04A、またもや選択肢が分かれた。しかし、ここはコストパフォーマンス(Hub付き)と「新しさ」の要素でBRL-04Aを選択する事に決めた。件の秋葉ショップからもBRL-04Aに関する問い合わせメールに対する返事が来たが、「常設製品とする予定だが入荷は現状未定」とのこと。実のところは、このメールが選択の最後決め手となったのだ。信頼するショップが常設する製品なら間違いはあるまいと。というわけで、プラネックスの直販サイトで着払いの申し込みを行った。「電話での問い合わせで16日より出荷と聞きました。必ず最速での出荷をお願いします」と備考欄に書いて。秋葉のショップの方、ごめんなさい。


●NTTからの届け物

 7月10日には、プロバイダ(ドルフィンインターネット)へのADSLプラン移行申し込みを行った。ドルフィンインターネットの場合、ADSLプラン(「プランフレッツ」のADSLタイプ)は、プロバイダ料金込みで2000円である。ちょっと高いと思われる向きもあると思うが、例えばasahi-netではフレッツADSLによる常時接続のに必要な最低料金は1400円(通常接続450円+ADSL料金950円)。ドルフィンインターネットが飛び抜けて高いというわけでもないと思っている。でも、もう少し下げて下さいね、ドルフィンインターネットさん。申し込みは、翌11日には問題なく受領された。
    ※7/31注) 何と、asahi-netが8月1日からADSL料金を550円に値下げすると本日発表した。これで月額1000円。ぬぅ・・・。
 また、親兄弟、友人関係に新しい電話番号を連絡する。銀行、カードその他は、面倒くさいので必要が出たら順次やっていくことにした。

 7月13日の金曜日、予定通りNTTからフレッツADSL接続ソフト(PPPoEソフト)と諸設定の資料の入った封書が送られてきた。マニュアルによれば、ADSL接続ソフトは、Windows等は標準で持っているダイアルアップ接続のソフトと使い勝手が近いようだ。しかし、この封書の中で最もインパクトの大きい情報は、2枚のチラシ(同じ内容の)だった。それにはこう書かれていたのだ。
「フレッツ・ADSL」とガス、電気、水道の自動通報、遠隔検針、遠隔警備などを
ご利用いただくには、別途配線工事等が必要となる場合があります。


お客様の安全にかかわる大切な事柄ですので、必ずご確認願います。
って、ふざけんなぁああああああああああああああああああああああああ! 工事3日前に送ってきてそれかい! 大体もう土日しかないから、確認なんかできないぞ! マンションの管理会社と土日に連絡を取ろうとしたが、結局取れなかった。・・・というか、実はその後もちゃんと聞いていない。しかし、今のところ身に危険は感じていなので、今後も大丈夫だろう(暴論)。

 7月14日になると、ようやくADSLモデムとスプリッタが宅配便で届いた。モデムのメーカはNECだ。モノを目の前にすると、だんだん実感が沸いてくる。そうかー、これが25倍かーってな感じである。信号は、まず電話の端子からスプリッタへ入る、スプリッタには2つの出口があり、中で分離された通常の通話信号とADSLの信号がそれぞれの機器へ向かう。すべて付属の電話ケーブル(一般に売っている物と同じ仕様)で接続する。とっても簡単。これを自分でやるだけで、工事料金が1万4千円近く節約できるのだから、笑っちゃう様な話しだ。

 7月15日の晩、HP等にADSLの導入と、少なくとも16日中のインターネット接続不可を告知した後、回線を切って上記の接続を行った。電源を投入すると、ADSLモデムの「LINE LINK」ランプが点滅を始めた。約0.4秒間隔の点滅は、「Lineの信号未検出」の意味だ。これが「トレーニング中」を表す0.2秒間隔の点滅となり、やがて点灯すればリンクが確立されたことになる。この状態からPPPoEソフトを使ってプロバイダにアクセスする。

 工事は何時に行われるのか分からないので、16日朝、「あの点滅している信号が点灯状態になったら、少なくとも通話回線は新しい電話番号で使えるよ」とAKIに説明してから家を出た。今日ぐらいは早く帰れるといいなー、などと淡い希望を抱きつつ。


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ちなみに、本日(7/30)付けで、「ヤフー、ADSLサービス「Yahoo! BB」の本サービス提供時期を9月に延期」という
ニュースが流れた。ほらほらほらぁー。

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