ADSL導入顛末記 第一部(きっかけから申し込みまで)
1月の「フレッツ・ISDN」導入以来、我が家の通信環境は安定していた。念願の常時接続。これで、(AKIの)電話代を気になくてすむ! ISDNの接続環境は実に安定していたので、快適なネット生活を送っていたのだ。 しかし、PCのスピードヲタク(意味もなく体感に結びつかないCPU等のPCパーツ増強を行ってしまう病気)である私は、何となく「次世代技術」である「xDSL」、だの「光ファイバー通信」だの、「無線接続」だのの紹介記事が気になり、ニュースサイトに見出しが出るたびにクリックして読み耽る、という日々を送っていた。
そもそも、2000年末くらいから、IT産業のアメリカに対する遅れをとり戻すために、NTTに対する郵政省の指導が強くなった。このあたりから、随分と風向きが変わってきたような気がする。そのおかげで、フレッツ・ISDNのエリア拡大速度が早まり。NTTも危機感を募らせてADSLサービスを開始し、「今後1年以内に全国民が安価な常時接続環境を手に入れられること」などという提言が政府関係機関から出たりし始めた。こんな状況強から考えて、「ADSLが青梅に来るのは、大体夏頃。早ければ7月くらいに来るかな」というのが私の予測だった。
そんな私の予測を結果的に的中させる発表がソフトバンクとヤフーからあったのが、6月19日。「ソフトバンク、ヤフー共同のADSL接続サービス開始。月額2,280円、最大8Mbpsで提供開始」という記事が、一斉にニュースサイトのトップを飾ったのだ。
「最大8Mbpsで、プロバイダ込み、ADSLモデムレンタル込みで2800円ちょっと? それも7,8月から??」 これが本当なら、他の業者は全く太刀打ちできないんじゃないか? 記事やら予備申し込みページやらで、調べたところ、Yahoo!でユーザを囲い込んで、コンテンツで稼ぐ事で採算を取ろうとしているらしい。ちなみに、私は未だにこの「コンテンツで稼ぐ」というのが頭の中で納得できない。検索サイト(Yahoo!自身も)もそうだけど、本当に、株価が天文学的になるくらい儲かってるんだろうか? 私って頭古いですか? 私の周りでは「煽って株価を急騰させといて売り抜けて、後は知らないっていう孫社長の商売なんじゃないの?」という声も。私にはこっちの方が納得し易いんだよなぁ…。
とはいえ、実はこの発表を読んで、私がまず一番最初に感じたのは「これでフレッツADSLの拡大速度がアップするに違いない」ということだった。ADSLは、この時点では既に隣の羽村市まで来ていた。次の拡張の際には青梅まで来るに違いない。それが早まるかも! そして、6月28日。果たしてNTTが動いた。光ファイバ通信(Bフレッツ)を8月1日から開始、合わせてフレッツADSLの値下げの発表をしたのだ。ADSLのエリア拡大情報は特に記事にはなかったが、私はある予感を感じて「Flet's公式サイト」に行った。すると、やはり! 東京都では唯一の追加エリアとして「青梅」ADSL開通が発表されていたのだった。申込受付開始日は7月9日、サービス開始は7月16日である。
この時点で、実はもう一つ。既に青梅で申し込み可能となっているADSL業者があった。6月21日から、アッカのADSLのエリアに青梅が追加されていたのだ。これで、東京めたりっく通信を吸収したYahoo! BB、フレッツADSL、アッカのADSL。選択肢は急激に広がった。 しかも! 折りもおり、自宅に届いた一通の封筒。そこには「マンション管理組合理事長様」の宛名が。そう、私は今住んでいるマンションの管理組合の理事長を(抽選の結果)やっているのだが、「サイバーホーム」なるマンション向け光ファイバ接続のインターネットサービスの案内状が来たのだ。管理組合の総会の際に導入を検討して欲しい、とのこと。接続速度は、マンションタイプで512Kbps〜1Mbps程度。30世帯以上集めれば、初期費用25000円、月額使用料3980円。
さぁ、ますます広がるブロードバンドへの道。もはや広すぎるって!
フレッツADSLの申し込み受付は7月9日。期間は短いが、考えることは山ほど有った。それは、
- そもそもADSLを(今すぐ)導入すべきか?
- ADSLに移行する際、電話番号を変えるのか?
- ADSL業者をどれにすべきか?
- 接続の際のブロードバンドルータをどれにするのか?
といった事どもだった。 1のADSLの導入の是非については、一つには今のISDN接続に不満を持っているかどうかという事でもある。冒頭で書いた通り、ISDN接続は実に安定していた。但し、主に2台のPCをルータ接続しているが、片方のPCでネットワークゲーム(ウルティマオンラインです、はい)を行っている際にもう片方のPCで重いHPを開いたり、大きなデータをダウンロードしていると、ゲームの動作がやたら遅くなる(飛ぶことはないけど)という問題があった。これは、ゲームの中では「死活問題」である。あと、写真の多いページでは、ブラウザのバグもあってか幾つかの画像を読み忘れたりすることがあった。え? それだけかって? そう、それだけ。あとは、ISDNの25倍という高速通信環境に対するPCスピードヲタクの執着が有るのみ。みなさんも、「本当に今必要なのか?」を自問自答してみた方がいいと思う。
2については、「電話加入の際にいきなりISDNから入った人」に限られる話しだ。まずアナログ回線の契約をしてからISDNに切り替えた人は、アナログ交換機からデジタル交換機にバイパスが張られるだけなので、アナログへ戻す際に交換機が変わることはなく、電話番号が変わらない。しかし、いきなりISDNに加入した場合は、交換機が変わるために電話番号が変わる。ちなみに、我が家は正にそれ。それもバイパスを張ればいいじゃないか! という意見もあると思うが、この件に関するNTTの見解はここにある。「68億円かかりますが、がんばってやります」とのこと。この件については、7月2日に地元のNTT局にいって、かなりつっこんで聞いてみた。しかし「できない」というニュアンス。近い内にできるようになる可能性は有るが…。むぅ。
ただ、その場合でも電話番号を変えずに済む方法がある。それは、通常の通話回線とは別にADSL回線を引く方法だ。この方法は、施設設置負担金72000円は必要ないため、実はそれほど大きな初期出費を伴わない。ただ、工事費は自宅に追加の端子が無い場合にはそれなりに必要だ。最低でもプラス10000円掛かると思った方がいい。自宅に追加用の端子がある場合は、ADSLの工事費と共用できるので、大した差はない。ランニングコストは、NTTの場合、月額5450円を要する。NTTの場合で通常の電話と共有するタイプと比べると下の表のようになる。
※2001年9月22日注
以下の料金比較表、接続業者分析などは、2001年7月初旬のものだ。その後、ADSL業界の競争は熾烈を極めており、値下げ競争が進んでいるだけではなく、次々と新しいサービスが生まれている。その辺りについては、後日談で改めて整理する予定なので、そちらを参照していただきたい。
基本料金 ADSL料金 レンタル費用 屋内配線
使用料合計 共有タイプ
(アナログへ移行)1600円 3800円 490円 60円 5950円 ADSLのみ
(ISDNは継続)2830円 5450円 440円 60円 8780円 ※アナログ回線の基本料金は地域によって異なる。表は青梅市のもの。
差額を計算すると、8780円-6330円=2830円となる。ISDNがどうしても必要という人もいるだろうが、そうでない人は今の電話番号に月々2830円(年間3万3960円)を払えるかどうかという判断になる。あとは、NTTがいつ対応するか、と料金値下げ時期の読みかな?
3については、それぞれのサービスの特徴が自分にあっているかどうかを考える事が必要だ。私なりに分析すると、以下のようになる。
Yahoo! BB 長所 ・とにかく安い(モデムレンタル、プロバイダ込みで2850円)
・しかも速い(らしい)
・取り付け工事まで事実上無料(先着100万名)でやってくれる
(但しNTT工事費3600円は別途必要)短所 ・「やる」という話だが、実績が無いので、どんな落とし穴が有るか分からない
(7月30日注 ほーらほーら。)
・他のプロバイダへの接続(PPPoE)ができない(当然か)フレッツADSL 長所 ・プロバイダを選べる(今までのプロバイダを使える)
・初期費用が比較的安い。自分でモデムの取り付ける場合は3600円短所 ・使用料金が比較的高い(レンタル込みで月額4350円+プロバイダ料金) アッカのADSL 長所 ・既に(考慮時点で)青梅でサービスを始めている
・何か今後速くなるかもしれないらしい短所 ・使用料金が比較的高い(レンタル、プロバイダ込みで5350円)
・初期費用が高い(asahi-netのキャンペーン価格ですらルータは16900円)
・会社の規模が小さい(将来的に不安)
・使用できるプロバイダが比較的少ない(7月28日現在、大手5社)サイバーホーム 長所 ・光ファイバー通信なので、将来的には更に高速化する(かもしれない)
・光ファイバー通信なので、信号劣化による速度低下がない(はず)短所 ・マンションタイプでは現状、1Mbpsか、場合によっては512Kbps
・他のプロバイダへの接続(PPPoE)ができない
・導入が大変(マンション管理組合の総会で可決されなければならない)
・初期費用が高い(30世帯以上でそれぞれ25000円)
ADSL接続業者選びについても結構迷ったが、まずサイバーホームは短所が多く、また導入までに一番時間が掛かるので却下となった。また、アッカも現状はメリットが少ない。従って、必然的にYahoo! BBとフレッツADSLの一騎打ちとなった。
決断の最初は、ADSLを導入するかどうか、だ。これは、ISDNとのコスト比較と性能比較で判断した結果、『導入』と決めた。月額の使用料は、NTTで比較した場合、下の表のようになる。
基本料金 常時接続サービス料金
ADSLはレンタル費用込み合計 ISDN
(現状)2830円 3300円 6130円 共有タイプ
(アナログへ移行)1600円 4350円 5950円 ADSLのみ
(ISDNは継続)2830円 5950円 8780円
ADSLに関しての月額利用料金と比較すると、ADSLのみのタイプですらプラス2650円、共用タイプに至っては逆に180円安くなるという逆転現象が発生する。(但し、アナログの基本料金は地域によって異なる。青梅は安いらしい。また、一般にプロバイダ料金はフレッツADSLプランがフレッツISDNプランより数百円程度高くなる)これで速度が25倍になるんだから、導入するしかないっしょ?!
次の決断は、電話番号を変えるかどうか。これも、迷いに迷った結果、電話番号維持に年間3万4千円は払えないということで、共用タイプを選択した。NTTが設備を変更するのを待ってたら、1年掛かるかもしれない。電話番号変更の連絡を各方面にするのはうんざりする手間だが、この際耐える事にした。
そして、接続業者選択の決断。Yahoo! BBとフレッツADSL。単純に言うと、「『安さ』のYahoo! 対 『自由度』のフレッツ」という構図になる。Yahoo!の速さはそれほど期待できないような気がする。ISDNなど、外部の影響を受け易い "G.dmt AnnexA" 規格であることに加えて、そのコストパフォーマンスから多くの人が加入すると思われるので、回線が込み合うのではないかと思えるからだ。 この両者の料金の違いを比較したのが下の表だ。
※フレッツADSLのプロバイダはasahi-netに加入済みである事を想定。
電話基本料 ADSL料金
レンタル込みプロバイダの
ADSL料金合計 Yahoo! BB 1600円 1540円 1290円 4430円 フレッツADSL 1600円 4350円 950円 6900円
その差2470円である。これまた年額3万円近い差だ。これに対して、フレッツADSLのメリットは「プロバイダを選ぶ自由」だ。最近は、殆どのプロバイダでフレッツADSLに対応していると行っても過言ではない。もちろん、我が家で加入しているプロバイダ(色々理由があって2つ。ドルフィンインターネットとasahi-net)もだ。これまでのHPやメールアドレスをそのまま使えるメリットは意外と大きい。また、既に運用中のサービスであり、ある程度の実績と情報がある点も見逃せない。
そこに、私にとってはかなりインパクトの強い情報が出てきた。Yahoo! BBのQ&Aの中に、「グローバルIPアドレス、固定IPアドレスの提供はありますか?」という項目があり、これに対して「正式サービスでの対応を検討している」との答え。え? つー事は、今はプライベートIPで、もしかしたらこのままプライベートIPのままでいる可能性があるということ?! 実は、このQ&Aは現在修正されていて「Yahoo! BB はグローバルIPアドレスを利用します。」という答えになっている。(これでも、ちょっと気になる言い回しだよね)しかし、修正前の答えは、ネットワークゲームが必須である私の決断に影響を与えた。
上でも書いたが、そもそもアクセスを採算が取れないほど安くして、「コンテンツで稼ぐ」というやり方について、私はどうしても違和感が拭い去れない。ユーザを囲い込んでその中で儲けようと言う発想は、何となくて気に入らない。NTTのエライさんが「インターネットの普及を考える上で、そういうのが本当にいいのかというのは疑問だ。コンテンツ事業者が伸びていく土壌を消すのではないかと懸念している。全体を伸ばすためにはよろしくないと思う」という発言をしていたが、こちらの方の意見に納得できた。
最後の決め手なんてこんな物である。という訳で、決断は下された。フレッツADSLに7月9日に申し込むのだだだだ!
これまでの文章を読むと、綿密な事前調査の上で、ズバっと決断を下したように思えるかもしれない。しかし、実は電話番号のことも含めて、私は最後の最後まで迷っていた。別件もあって7月9日は午前中半日休暇を取得していたのだが、申し込み開始時間の朝9時になっても、NTTへの電話は掛けなかった。ソファに座って煩悶しているところにAKIから「どうするのー」と突っつかれて、ようやく電話したのは10時を回ってからだった。「116」の番号をプッシュすると、オペレータのお姉さんの元気のいい声が聞こえてきた。 オペレータのお姉さんに、現在ISDNを使っている事を言うと、途端に声のトーンが変わった。
7月2日にNTT局を訪ねて色々聞いた際に、局番的には大丈夫である事は確認していたので、「電話番号が変わることを言い出すためらしい」とピンときた。「はい、それは覚悟の上です」などと、我ながら変な台詞を吐きつつ申し込みを続ける。「新しい電話番号は次の3つの内どれにしますか?」と、3つの番号を言われた。その中で一番覚えやすそうなのを選ぶ。さて、これを親兄弟やら親戚やら友達やら会社やら銀行やらに連絡しなくっちゃ。次に、アナログに戻す際の付加サービス(プッシュフォン、ナンバーズディスプレイ等)の確認。その後、ADSL導入可能かどうかの回線チェック。これは結構時間が掛かった(考えてみれば、ここで使用不可となる可能性も結構あったかも)が、やがてOKの連絡がきた。その後、宅内工事は(もちろん)自分でやることにして、「13日金曜日までにマニュアルと接続ソフトを郵便で、14日にADSLモデムとスプリッタを宅急便でお届けします。工事実施日は16日です」との有り難いお言葉を頂いた。うし! 初日じゃん! 東京では、酷いときは1ヶ月待ちだったと言うが、さすが新たに拡張されたエリアだけ有って、それなりのリソースは確保してあるらしい。実は、これも急いで導入を進めた理由の一つだったのだ。
しかし、ここで多少問題が。工事の確認をどうするか、である。私も、流石に2週連続半日休暇はできないし、AKIも16日は昼間はいない。結局、連絡無しで工事だけしてもらうことにした。前の晩からセッティングだけはしておいて、確認は夜帰ってからやればいい。 その後、電話局から自宅までの距離をオペレータに確認したところ、約1.7Kmとのことだった。続いて、「2.5Km以上だと速度が落ちて来ちゃうんですけど、このくらいなら大丈夫だと思います。でも、いろんな事が影響して速度が出ない場合も有るんですよねー」と、やたら言い訳がましいコメント。それにしても、「ISDNよりは速いと思いますけどぉ」はねぇだろ、おい。
こうして、迷いに迷ったあげくの申し込みを終えて、私はまた迷うことになったのだ。今度はルータの機種選定で。